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臨床研究内容

C型慢性肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療が,門脈圧亢進状態に与える影響

C型慢性肝疾患に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療では高いsustained viral response(SVR)が得られ,肝細胞癌の発癌率は低下した.門脈圧亢進症の概念としてclinically significant portal hypertension(CSPH)はHVPGが10mmHg以上と定義され,腹水,静脈瘤,肝性脳症を伴う非代償性肝硬変へ進行する病態と考えられている.DAA治療は線維化の改善に伴い門脈圧亢進状態も改善することが期待され,門脈肝静脈圧較差(HVPG)が低下すると予測される.特に非代償性肝硬変は門脈圧亢進症を高率に合併するが,ソホスブビル・ベルパタスビル(エプクルーサ®配合錠)投与後の長期経過に関しては臨床情報の蓄積が少なく,DAA治療がHVPGに与える影響は明らかにされていない.HVPGは肝静脈カテーテル法による間接的測定法が用いられるが,侵襲性が高く普及していないことから,肝硬度あるいは肝線維化の程度からHVPGを予測する方法が一般的となっている.フィブロスキャン®(FibroScan)やMRエラストグラフィー(MRE)は,肝硬度とともに脂肪化の評価が可能あり,最も注目されている測定法であるが,必ずしも測定機器は普及しているとはいえず,その汎用性が低い.一方,臨床的に使用頻度が高い検査項目を用いた肝線維化予測式の有用性が報告されており,C型慢性肝疾患ではAPRI,Fib-4などが用いられることが多い.Wang Leら(PLOS ONE, 2017)は,線維化予測式であるKing’s scoreおよびLok indexによりCSPHの層別化が可能であると報告している.SVRを達成したC型慢性肝疾患148例を対象に門脈圧亢進状態について検討したところ,DAA治療前148例中17例がCSPHと診断され,DAA治療により13例がnon-CSPHに改善した(改善率:76.5%).以上よりC型慢性肝疾患に対するDAA治療により門脈圧亢進状態が改善する可能性が示唆されたが,経験的に非代償性肝硬変ではSVRを達成しても門脈圧亢進状態が改善しないことがあり,DAA治療が肝細胞癌の発癌を含め門脈圧亢進状態に与える臨床的意義について明らかにしていきたいと考えている.

(馬場 俊之)