研究Front Line

最先端の臨床研究

左側大腸T1癌の臨床病理学的特徴

望月 健一/一政 克朗/宮地 英行

本邦での大腸癌による死亡者数は約5万人(2018年)で、悪性腫瘍の中で2番目に多い。男女別にみると男性では3位、女性では1位であり、治療および予防のために注力すべき疾患の一つといえるだろう。そのような大腸癌において、部位による特徴の違いが多く報告されている。脾彎部を境界として下行結腸~直腸を左側、盲腸~横行結腸を右側としたとき、左側ではRAS・BRAF変異が少なく、抗EGFR抗体薬の効果が高く、予後が良いこと、また右側では高齢で女性に多く、粘液癌や低分化腺癌を含む割合が高いこと、RAS・BRAF変異が多く、予後が悪いことなどが報告されている。しかしこれらの報告は進行癌(T2-T4)を対象としたものであり、T1癌に焦点を当てた報告は極めて少数である。

そこでわれわれは当院で治療された1,142例の大腸T1癌について、左側と右側に分けて臨床病理学的特徴の違いについて調査を行った。その結果、大腸T1癌では左側の方がリンパ節転移率が有意に高いことが分かった。これはすなわち大腸T1癌は進行大腸癌と異なり、左側の方が予後が悪い可能性を示唆している。他の臨床病理学的特徴としては、左側ではリンパ管侵襲の割合が高く、右側では高齢で、粘液癌や低分化腺癌を含む割合が高いことがわかった。これら右側の特徴は進行大腸癌と同様のものであった。今後は大腸T1癌の症例をさらに集積し、予後や分子生物学的特徴などについても研究を進めていきたい。

最後に、本研究は工藤教授のもと、内視鏡治療および外科的治療を精力的に行っている消化器センタースタッフの協力のもとに成り立っている。この場を借りて深く感謝の意を表したい。

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