研究Front Line

最先端の臨床研究

当施設での腹腔鏡下切除術教育指導法

澤田 成彦

腹腔鏡下手術での享受できる長所は、開腹手術時では同定認識が困難であった膜の構造や解剖を確認しやすいことである。また、手術に参加している者全員が同時に視認して手術を遂行することができるようになってきた。このため、外科研修医(専攻医)や研修医などの教育の観点からも腹腔鏡下手術は有用と考える。手術参加者全員で共通の術中所見を共有でき、解剖学的構造や剥離層の認識・指導が開腹手術に比べて容易である。進行癌症例で若手外科医には切離層の認識が困難な場合にも指導者の手術をモニタで見ることで学ぶことも可能である。開腹手術を中心とした従来の外科研修よりも手術に参加し、学べている印象も強く感じている。

また、現在では、ハイビジョン画像であり、画像の解像度の向上により、周囲への炎症が及んでいるような進行癌、術前加療症例(化学療法や放射線法)の進行癌でも、癌と非癌部の境界を判断しやすくなり、Oncologicalにも適切な切除範囲を決定しやすくなった。大腸癌では、特に、進行直腸癌の腫瘍周囲に浮腫や炎症を認める症例では、直腸癌では直腸間膜背側の剥離、骨盤内周囲臓器との剥離において、開腹時では手の感触に頼ることが多く、適切な剥離層が確認できないことが多かったように思える。

また、胃癌では胃脾間膜の処理においては、開腹時では出血を見ることが多かったが、腹腔鏡操作では確実に血管をクリッピングでき、出血する場面が相当減少した。

当科では進行癌でも腹腔鏡下手術を施行することが多いが、開腹手術と比べて根治度が低下することもなく、良好な成績を得ている。腹腔鏡下手術は、手技手法を定型化すれば進行癌に対しても安全で良好な成績が期待できると考える。

さて、現在腹腔鏡手術は多くの施設でなされており、その技術を認定する試験が毎年行われている。しかし、胃切除術、大腸切除術ともに合格率が30%未満という狭き門である。

我々は内視鏡外科学会技術認定医を毎年取得させることを目指して様々な工夫をしてきた。

その一つとして、術式を定型化することで2018年まで、内視鏡外科学会技術認定医を毎年取得してきた。
他の臓器手術も同様であるが、内視鏡外科学会が提唱しているビデオクリップに準じて、スムースに操作することもポイントと考える。

先ずは手術を幾つかのステップに分けて、手術手技を定型化した。
具体的にはステップ毎の鉗子操作では、鉗子で把持する部位、および牽引方向、使用鉗子を定型化した。操作上では、いかに左手鉗子で把持する部位を的確にアプローチして把持できるか、その把持のかけ方、挿入部位、組織接触、牽引方向、牽引力が的確か、など詳細にわたって定型化した。
また、スコープ操作も定型化することにより、若手外科医が解剖を理解でき、操作手技の意義を理解できるようになった。

一方、指導医も手技を定型化することで、各場面での注意する箇所を再認識できる様になったと考えている。
定型化を図ったことにより、高度進行癌の開腹手術においても、若手外科医の執刀、助手の操作が非常にスムースにできる様になったと思え、満足していただいていると考えている。

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