研究Front Line

最先端の臨床研究

AIを用いた大腸T2癌の治療戦略

中原 健太/一政 克朗

これまでに当センターでは大腸T1癌に対し臨床病理学的所見からリンパ節転移の有無を予測するAIモデルを開発してきた。このノウハウを生かし、大腸T2癌においてもAIによるリンパ節転移予測モデルの作成を試みている。

手術により切除された大腸T2癌のリンパ節転移率は約23%であり、標準治療はリンパ節郭清を伴う外科手術である。本邦の外科手術成績は良好であるものの縫合不全などGradeⅢ以上の手術合併症率は7%、手術死亡率が1%程度とされている。また特に直腸癌においては機能喪失やQOLの低下が問題となる可能性がある。超高齢者や重度の基礎疾患などにより標準的な外科手術が躊躇される症例は、実臨床において時に経験する。

臨床病理学的所見からリンパ節転移のリスクを高精度に予測できるのであれば標準的な外科手術を回避できる症例を拾い上げることができる可能性がある、との考えのもと大腸T2癌に対しリンパ節転移の有無を予測するAIモデルの作成に着手している。Preliminaryなdataであるが、作成したAIモデルの精度は正診率98%と高精度にリンパ節転移の予測が可能であった。

 今後の展望としてはAIを用いた高精度なリンパ節転移予測により大腸T2癌におけるリンパ節転移の超低リスク群を層別化することで、さらなる個別化治療、低侵襲治療、医療費削減などの実現を目指す。

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