研究Front Line

最先端の臨床研究

C型慢性肝炎に対する
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療が,
門脈圧亢進状態に与える影響

馬場 俊之

C型慢性肝疾患に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療は,線維化の改善に伴い門脈圧亢進状態も改善することが期待される.Clinically significant portal hypertension(CSPH)はHVPGが10mmHg以上と定義され,腹水,静脈瘤,肝性脳症を伴う非代償性肝硬変へ進行する病態と考えられている.これまで臨床的に使用頻度が高い検査項目を用いた線維化予測式であるKing’s score(Timothy JS, 2009)およびLok index(Lok AS, et al, 2015)からCSPHを層別化し(Wang Le, 2017),DAA治療が門脈圧亢進状態に与える影響について検討してきた.ウイルス学的著効(SVR)を達成したC型慢性肝疾患149例中,治療前にCSPHと判定された症例は16例存在した.治療前後のfib-4 indexは,CSPH(16例):10.1±4.1→4.3±2.0(p<0.0001),non-CSPH(133例):3.2±2.1→2.2±1.2であり(p<0.0001),何れも線維化スコアは有意に改善したが,CSPHの治療後スコアはnon-CSPHの治療前スコアよりも高値であった.さらにCSPH16例中,non-CSPHに改善した症例は13例であり,改善率は81.3%であった.治療前のmALBI grade 2a/2b/3は,改善例:2/13例(15.7%),非改善例:3/3例(100.0%)であり(p=0.0044),非改善例では肝予備能低下例であった.CSPHと診断されたC型慢性肝疾患は,抗ウイルス治療により肝線維化スコアは改善するものの依然高値を示し,治療前に肝予備能が低下している症例では門脈圧亢進状態の改善は得られず,慎重な経過観察が必要であると考えられる.

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